つり革に触れない、ドアを開けるにも一度拭かないと触れない、そんな症状が起きるのが潔癖症です。潔癖症とは、その人の性格や行動とは関係なく、病気のひとつであり、適切な治療が必要なだけでなく、患者自身の苦痛を取り除くことが必要となってきます。なぜ潔癖症になってしまうのか、その原因と共に解決する方法について、詳しくご紹介します。
潔癖症の症状と原因
きれい好きな人のことを潔癖症と考える人も多くいますが、実は潔癖症とは精神疾患であり、病気のひとつです。潔癖症の症状が悪化すると、生活に支障をきたすこともあります。病気としての潔癖症の症状について、詳しくご紹介します。
潔癖症の症状
・汚れているものに対する恐怖
・きれいになっていても「まだ汚れているように思えて」触ることができない
・大皿に盛り付けられたサラダを複数の人と食べることができない
・寿司やおにぎりなど、人が触ったものを食べることができない
・きれいになったという確信が持てず、体や手を洗い続け、止めることができない
・自分が触れた場所に菌がついているため、掃除ができない
・何度も繰り返し同じところを磨く、きれいになったか何度も確認を繰り返す
潔癖症の人は、汚れや不潔なものに対する恐怖心が強く、自分自身さえも汚れている対象と見なすことがあります。潔癖症は不潔恐怖症ともいわれ、不潔であることそのものが恐怖の対象なのです。
潔癖症の原因
普通の人の場合、多少不潔であっても、それがそのまま体に毒になるものか、そうでないものか判断しながら対応ができます。しかし潔癖症の人は、不潔であることがすべて悪いことであり、恐怖でしかありません。そのような思考に至ってしまう原因としては、以下のようなことが考えられます。
育った環境によるもの
親自身がきれい好きで、さらに不潔なことは病気や命の危険に関わる、といったことを親や周囲から言い聞かせられながら育つと、不潔なものに対する不安や恐怖が植え付けられてしまいます。親が潔癖症だった場合、子供に不潔を理由に様々な行動を制限するため、さらに恐怖心に支配されてしまいます。さらにテレビコマーシャルの不潔なもの、ばい菌などへのイメージが、そのまま恐怖としてすり込まれるといったことも増えてきています。
親からの厳しいしつけ
親のしつけが厳しかった、また親の命令に従うよう言い聞かされて育ったなど、抑圧されて成長した場合、これがストレスとなり、潔癖症を引き起こすことがあります。
潜在的な敵意によるもの
人間関係やトラブルなど、表には出すことができないストレスを抱え続けた結果、他人や自分への嫌悪が潔癖症の症状として表に出てくることがあります。自分の感情を表に出せない人や、感情を押し殺しがちな人はストレスを溜めやすく、潔癖症になりやすいといえます。
過去の体験やトラウマによるもの
過去に虐待やいじめ、また大きな災害や事故、家族の死など、心に大きな衝撃を与えるような体験をした人も、潔癖症の症状が出ることがあります。これは強いストレスを抱えていることが、強迫性障害につながり、潔癖症の症状となって表に現れているものです。
普通の「キレイ好き」との違い
不潔なものを許せない、自分がきれいにしたものでないと触れないといった行動は、きれい好きの範疇で、病気までに至っていない場合もあります。では、きれい好きと潔癖症の違いとはどのようなものなのか、詳しくご紹介します。
きれい好きであることと潔癖症の大きな違いは、清潔にどれだけこだわっているか、その差です。自分の周りをきれいにしないと気が済まない、また周りの人にもきれいでいることを強要する程度なら、まだ極度にきれい好きな人の範疇だといえます。
潔癖症になると、不潔であることに恐怖を感じ、清潔でなければならない、という気持ちにつねに悩まされています。またそういった考え方が、人とは違う、おかしい、と感じてはいるものの自分ではその気持ちをコントロールすることができない状態にあります。
潔癖症は精神疾患である、強迫性障害の一つと考えられています。強い不安やこだわりにより、何度も同じ行動を繰り返し、潔癖症だと「何度も手を洗ってしまう」症状がありますが、何度も家の鍵を確かめる確認の行為や、物の配置に異常にこだわるなど、いくつかの症状が重なって出てくるようになり、そうなると生活に支障が出てきてしまいます。
潔癖症の治し方
様々な強迫性障害の症状を引き起こす前に、潔癖症を克服する必要があります。
潔癖症を治すために
・不潔に対する恐怖を克服する
つり革を触ってみる、ドアノブを触ってみるなど、触ることに恐怖や気持ち悪さを感じることを、あえてすることで克服していきます。
・自分が思うきれいのボーダーラインを下げる
完璧主義であったり、こうでなくてはならない、といった気持ちが潔癖症の症状を悪化させます。少しぐらいきれいにならなくても十分きれいにしている、と受け入れることが大切です。
・きれいにすることばかりを考えないよう他に打ち込めることを探す
趣味の時間に没頭していれば、きれいにしなければならない、といった考えから気持ちをそらすことができます。打ち込めるものを探すことも、潔癖症を克服するためにできることの一つです。
・病院で気持ちが軽くなるよう治療をおこなう
病気ではないのにみんなが病気だという、という気持ちでいると、そもそも病院に行かず、また自分が異常であることにも気がつかないままです。病院で自分の今の現状を聞いてもらう、理解してもらうことも治療の第一歩です。
潔癖症の人との付き合い方、気をつけたいこと
付き合っている相手の人が潔癖症だった、また家族が潔癖症になってしまったなど、身近な人が潔癖症の場合、不用意な対応や言葉によって、相手を傷つけるだけでなく関係が修復できないほど破綻してしまうこともあり得ます。病気ではありますが、その症状を受け止めることも大切です。
潔癖症の人への対応
・相手の気持ちを優先する
潔癖症といっても、人によりその基準には違いがあり、大丈夫なことや大丈夫でないラインも様々です。それをきちんと観察し、合わせることができるのなら合わせ、できないことは伝えるようにします。
・相手を否定する言葉を口にしない
気にしすぎている、おかしい、とこちらが思っても、相手はそれが普通だと考えていることもあります。
・相手の行動を笑わない
潔癖症の人には様々な強いこだわりや譲れないルールがあります。付き合っていく上で、そういった行動を笑ったり馬鹿にするようなことを慎みましょう。
・相手を受け入れても、言いなりにはならないようにする
相手の考えや行動を受け入れるのは大切ですが、それにすべて従っていると引きずられてしまいます。少しずつでも「そこまでしなくても大丈夫」というラインでお互いに歩み寄れるよう努力していくことが必要です。
きれい好きや消毒好きなど、不潔なことが受け入れられない人が増えてきていますが、自分でも止められないような行動を繰り返す場合には、病気であると受け入れることも必要となります。周りでもサポートしながら、清潔なことに完璧を求めすぎないように考え方を変えていくことも大切です。